第一話
PROLOGUE


199×年……2月28日、その日で、彼女の野望はついえた筈だった……

「待っていたわ……祐介君……」
結奈は近所の公園を下校中の祐介にそう言った。
「紐緒さん? 待ってたってどう言うこと?」
こんなところに紐緒さんがいるなんて珍しいな、それにいつもと目が違う。
真剣な表情の紐緒さんは何か大切な話があるのだろう。そう思いながら祐介は聞き返した。
すると結奈は祐介が思いもよらないことを口にした。
「私の、野望を達成するためにはあなたが邪魔なのよ」
少し間を置いて結奈はそう言った……
結奈の思わぬ発言に戸惑いながら祐介は
「そんな、俺、紐緒さんの邪魔なんてした覚えないよ」
と、弁解した……それもそのはず、祐介は結奈の実験の邪魔などするどころか、よく実験の手伝いをしていたくらいなのだ……それが、今日になっていきなり邪魔者扱いとは、覚えがないのは無理もない。
「問答無用よ……、真・世界征服ロボ!!」
しかし結奈は聞く耳を持たず、完成したばかりの「真・世界征服ロボ」を呼び出した……
「……こうなったらやるしかない! 世界征服ロボ!!
意を決した祐介は、科学部奥義である「世界征服ロボ」で対抗する。
ちなみに「世界征服ロボ」とは、祐介が3年間の間に学んだ科学技術の粋を結して、完成させた人型戦闘兵器である。もちろんその名を付けたのは祐介ではない。近いうちにきっと役立つだろうと結奈が「未来の部下」である祐介のロボに、世界征服ロボと名付けさせたのだ。
そして、その数ヶ月後に結奈は、祐介のロボより格段にパワーアップした「真・世界征服ロボ」を完成させたのだった。
しかし、その世界征服ロボを上回る性能を備えた代物でも、ほんの2,3ヶ月で完成した急場しのぎの性能しかもっていないはずである。
何度もパワーアップを施してカスタマイズされた祐介ロボに勝利することなど出来よう筈もないのは最早自明の理である。
しかし結奈はロボに命令を下す。
「ロボ! 行きなさい!!」
命令を受けた結奈のロボは祐介に向かって行く……
「くそ! ロボ! 紐緒さんを傷つけないように反撃しろ!!」
そうして、ロボ同士の闘いは2時間を超えようとしていた……
そして…
「そろそろとどめよ!」
結奈は勝負を決める気だ!
「服従ドリルパーンチ!! 独裁ミサイルシャワー!! ……」
鋭いドリルの拳がロボに襲いかかる……
すんでのところでかわすと、ミサイルの雨……
こっちの方まではうまくかわせない!!
ドガン! ドガン!
ミサイルか容赦なくロボにふりかかる……
「クッ! ロボ!! 次が来るぞ!!」
よろめいているロボに止めの一撃が放たれる!!
「終わりよ! 世界征服ハイメガビーーム!!」
真・世界征服ロボがエネルギーを溜めている……
ギュンギュンギュン…………
そして……
ビビー−−−−−−−−−−!!
放たれたビームは、世界征服ロボの左腕と左足を奪った。
「ロボ……!!」
大ダメージではあるが幸いな事にコアの損傷は免れているようだ。
あっちも、エネルギーの消耗が激しかったのか、暫く動けそうにないようだ。
恐らく先に動けた方がこの勝負を制すだろう……
「ロボ! もう少しだ…… 行けえ!!」
これが祐介の最後の命令である……
そして…………
世界征服ロボは攻撃の移る……損傷は軽くないとはいえコアが無事なら何とかなる。
「服従パーンチ! 独裁ミサイール!! ……」
動けない真・世界征服ロボはかわす術など有る筈もなくすべて直撃する……
「! ロボ!!」
結奈が叫んだ。しかし……
「世界征服ビー−−ム!!」
ビビビビビ!!
世界征服ロボの最後の一撃!

……ドガン!

……真世界征服ロボはコアを貫かれた。
「ガギグ……」
ドガドガドガン! ガガガガガガガガガ…………
派手に爆発音を上げて真世界征服ロボは大破した……

……………

「紐緒さん…………
祐介は歩み寄った
「そう……」
何かを決意したように呟くと結奈は
「私の心は決まったわ…それじゃ失礼…」
と踵を返した……
一体なんだったんだ? 祐介はそう思った。
何故結奈は自分に戦いを挑んだのか解らなかった
……

そして卒業の日がやってきた…………

…全く校長の話が長すぎるんだよな〜って、それがなきゃ卒業式じゃないか…
そう思いながら祐介は教室に入った……
ふぅ……もう、卒業か……3年なんて短いもんだ……
っと、回想モードにふけっていると、机の中に何か入っているのに気付いた。
「何だろう? ……
机に手を入れてみると、
「ん? 手紙か…… どれどれ……」
手紙には、

「伝説の木で待っています」

っとだけ書かれていた……
誰からだろうと思ったが祐介は伝説の木へと急いだ……
「はあはあ……」
……伝説の木の下にたどり着いた。

そして、伝説の木の下には…………
                結奈がいた……

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