第二章 〜虹色のX'mas eve(1)〜
そして、それから数年が経ったある年の暮れのことだった。
俺は卒業と同時に入団したプロサッカーチームでほぼレギュラーの座を確保し、沙希は料理の専門学校に進んだ後、開校して以来の優秀な生徒ということで何とそのまま同校の講師として迎えられていた。
まさに二人とも順風満帆、後は人生の「ゴール」を決めるだけ、そう思っていた。少なくとも”あの日”までは。
その年のクリスマスは、彼女のたっての希望で彼女の家で二人きりのパーティーを開くことに決まっていた。お互いに忙しくなってきたのでたまにはそういうのもいいんじゃあないか、その時はその程度の理由と思っていたのだが…
そして、”その日”はやってきた。
イブの前日の夜、俺の家にかかってきた一本の電話、それが全ての始まりだった。
”ぷるるる………””ぷるるる………”
「はい、もしもし。」
「あ、もしもし、私です。」
「私って…え、もしかして詩織?」
「うん。久し振りだね、あなたとこうして電話でお話するの。」
電話の相手、藤崎詩織は俺の幼馴染で高校時代は男子生徒のマドンナ存在だった女の子だ。そして俺もご多分に漏れずその「男生徒A」の一人であったことは否定のしようがない。
「そうだな。で、今日はどうしたの?」
「あのね、明日は何か予定入ってる?久し振りに逢いたいんだけど。」
「明日は、夜は空いてないけど昼間なら何とか時間作れると思うよ。」
「”何とか…”って、相変わらず忙しいんだね。」
「そういう訳でもないんだけど、夜だけは前から予定入ってたから。」
「うん、わかったわ。じゃあ10時に駅前広場まで来てくれる?」
「ああ、いいよ。」
高校卒業以来、詩織と会う機会はめっきりと減ってしまった。沙希と付き合い始めたこと、プロチームへの入団で家を離れないといけないことなどがその理由なのだが…
そして、当日の朝を迎えた。