紐緒爆発


(注意)この話は某E社製作のゲーム『鈴●爆発』とは「あんまり」関係有りません。


 ある土曜日の昼・・・
「・・・よくもここまでストレスを溜めたものね。」
 科学部部室にて、紐緒結奈は開発した装置によって『彼女』の深層意識を探り出し、そうつぶやく。
 その『彼女』は・・・結奈の横で麻酔により幸せそうに眠っている。
 『運動部のアイドル』虹野沙希である。
「ふっ・・・あなたには何の恩も無いけど、これも私が爆発に巻き込まれないため、あなたの『心の爆弾』・・・取り除いてあげるわ。」

 きらめき高校3年生に1人の男がいた・・・
 その男は勉学優秀、スポーツ万能、容姿端麗、流行もバッチリ・・・とありとあらゆる分野で人外なる能力をもっている。
 そのため、彼に好意を寄せる女子生徒も数多い。
 『スーパースイマー』清川望、『きら高の女王様』鏡魅羅、『幼なじみで才色兼備』藤崎詩織・・・・・・と知ってるだけでも両手の指じゃ足りない。
 当然、沙希や結奈もその1人だ。
 しかし困ったことにその彼・・・・・・浮気者の癖があるらしく、1人の女性に集中できず、女生徒らに対し、まるでローテーションを組むかのようにデートをし回ってるのだ。
 当然そんな彼に傷つく人間がいてもおかしくは無く・・・
 かく言う沙希もその1人で・・・
「しかし・・・まさかタイムリミットがあと半日とは・・・今日は徹夜ね。」
 彼女の爆弾はすでに『爆発寸前』であった。
 爆発するとどうなるか・・・
 その女子が持つ、彼への好意が地に墜ちる・・・・・・それだけならまだいいのだが・・・
 他の女子の好意を減滅させ、さらには女性の持つ『爆弾』の爆破リミットを早くするという・・・尋常ならぬ効果を発揮する。
 下手すれば『連爆』を起こし、取り返しのつかないことが起こりかねない。
 結奈が知ってる限り、爆弾を持っている女子はかなり多い。
 爆破すればするほど・・・彼への好意が消えていき・・・そして自分の爆弾も・・・
 他人が脱落するのは嬉しい事だが、自分まで巻き込まれるのは御免である・・・
 それゆえ、結奈は彼女を助けねばならなかった。
 他にこの『爆弾除去』ができる人間はいないのだから・・・
「じゃあ・・・始めるわよ。」

 爆弾処理の初手・・・外壁を取り除くこと。
 変な刺激が即爆破につながる可能性もあるので最初から気が抜けない。
 特殊な装置により、沙希の深層意識がデジタル化され、モニターに映る。
 それを見ながらデジタル信号を発し、アナログ変換しつつ彼女の意識へと送り込む。
 彼女の性格がモニターに表示される。
 『マジメであらゆることを真剣に受けとめる。芯が強いので少々のことではめげない』
「ふっ、外壁は少々手荒に扱っても問題なさそうね。こういう性格は・・・中身が問題なのよ。」
 そう言い、一応注意を払いながら外壁を開くための信号を送る。
 芯の強い人物が爆弾を抑えれない・・・それは中心部に大きな起爆物があるということだ。
 文では表現できないが・・・この処理作業は結構時間がかかる。
 外壁を開き、次の壁を見るまでに1時間もかかった・・・
 これすなわち・・・結奈でないと不可能な作業であるということ・・・

 爆弾の基礎・・・複数の壁に囲まれていること。
 多くの作業をさせることでミス及びタイムロスを誘い、取り除かれる可能性を極限まで下げる。
 単純ではあるが、リミットが短いだけに結奈でも苦戦する。
「どれどれ・・・なるほど、自分と一緒に帰った翌日に彼が藤崎さんと一緒に帰ってたと・・・彼女の性格ならダメージにはならないけど立派な壁として残るってわけか・・・結構数が多そうね。」
 誰もが思わず投げ出しそうな不安をも、彼女には『己への挑戦』のような気がして、
「ふふふ・・・ますます燃えてくるわ。」
 結奈は黙々と・・・壁を取り除いていく・・・

 爆弾処理の落とし穴・・・トラップ。
 取り除くべきものと見せかけて、実はそうすることで起爆したり爆発を早めたりする厄介なもの・・・
 モニターには・・・ある出来事がくっきりと映っていた。
 全然忘れられない意識ということを意味する・・・
 2年次の夏合宿・・・部員全員が食中毒を起こし、その料理を作ったのが彼女・・・
「これは精神的ダメージが大きそうね。これが原因・・・じゃないわね・・・」
 結奈はしばらく構想し・・・
「ふっ、こんなトラップに巻き込まれる私じゃないわ。」
 結奈の考えた理由は2つ。
 1つ・・・食中毒の原因が彼では無いこと。
 2つ・・・それどころか自分の責任が大きく、彼には悪いと思っているはず。
 3つ・・・この事件は2年生の時。これが原因ならすでに爆弾が爆発しててもおかしくない。
 よって・・・
「これは逆に爆発を抑えている材料のはず・・・何もせず放っておくのが正解よ。取り除いたら・・・きっと爆発するわ。」

 爆弾処理の大詰め・・・スイッチ切断。
 通常の爆弾は、赤と青の線があり、どっちかがスイッチ。もう片方が起爆線である・・・
 『心の爆弾』も基本的には2つに1つ・・・要因と繋がっている本能と理性・・・
 正しく精神を切り離せば、爆弾は消失・・・とは必ずしもいかないまでも、爆発を最低季節単位まで抑えることができる。
 しかし・・・間違えれば・・・・・・即爆発。
 多くの壁を取り除き、トラップをかいくぐり、要因を見つけ出した頃には・・・
 爆破まであと1分となっていた。
 要因は簡単だった。『デートをすっぽかされたこと』。
 爆弾を助長している精神・・・「本能」「理性」・・・どちらかを切れば爆破は免れる・・・

 

 さて・・・疲労と沙希の意識相手に戦い抜いた結奈最後の選択は・・・・・・・・

「彼女は想像以上に芯が強いわ。辛いこともちゃんと処理できてるはず・・・つまり、爆発したい気持ちがあるから危ないのよ。」

 結奈は意を決し、「本能」を切り離した・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の心は結奈の目の前で見事に爆発した・・・

 沙希の精神の・・・弱さを見抜けなかった結奈、一生の不覚である。

 これにより『彼』に対する沙希のときめき度は消失。
 結奈も間近でとばっちりを受けたことにより、その被害は絶大。
 まさに「ミイラ取りがミイラになった」かの如く、結奈が真っ先に『連爆』した。
 当然、ダブルで爆弾が爆発したら他の女子もタダで済むはずがなく・・・

 

 そして日は流れ、卒業式・・・

 伝説の樹の下で・・・『彼』の前に立っていたのは外井だったという・・・

 今年度の卒業生で、伝説を成立させた女子生徒は珍しく1人もいなかった。

 

 BAD END

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