「卒業式の日の藤崎詩織〜伝説の樹の下の裏側で〜」


第2幕:如月さんとの舞台裏

「こんにちは、藤崎さん」
 緑髪の眼鏡をかけた知的な少女が、私の前に立っていました。
「あっ… 次の如月 未緒さんですね」
 私がそう聞くと、如月さんは微笑しながら、
「はい、如月未緒です… って、藤崎さんも御存知ですよね」
 と答えました。それにつられて、思わず笑ってしまってしまいました。
「それにしても、本当に大変ですね、藤崎さんも」
 如月さんが心配そうに聞いてきました。
「うん。 …でもこれが仕事だから、しょうがないかな、って思っているわ」
「それならいいんですけど…」
「それに、こういう仕事をしていると役得だったりすることもあるの。何しろ告白が最後にできるし、ね」
「そうですね、そういう考え方も出来ますね、確かに」
 如月さんはそう言って微笑を私に見せてくれました。

「それにしても、如月さんは一体誰に告白するつもりなんですか?」
 私にしては珍しく悪戯っぽく聞きました。私、こんなことできるなんて、自分でもビックリしています。
「実は… 早乙女さんに告白するんです」
 私は、如月さんの発言にビックリして聞き返しました。
「早乙女君、って… あの、早乙女、好雄くん?」
「はい、そうですけど」
 如月さんは何の迷いもなく肯定しました。

(うっそ〜〜〜〜〜〜!?)

 もちろん本人の目の前です。そんなことはとても声を出して言えません。でも私はそんな気持ちになりながら次の質問をしました。
「一体好雄くんのことを好きになったのは、どういうことがきっかけだったんですか?」
 なんだか芸能人の人にレポートしているレポーターのような感じですね、私。
 でも冗談抜きで、如月さんがなぜ好雄くんのことを好きになったのか聞きたくなりました。
「そうですね…」
 如月さんはそう呟いてから、簡潔に説明してくれました。

「2年の春に、好雄くんが発案してダブルデートをしたんです。
 その時一緒だったのが、虹野さんと、早乙女さんと、早乙女さんの親友の『彼』だったんです。」
「『彼』?」
「はい、サッカー部に所属して、一生懸命頑張っていたんですが、その時レギュラーに選ばれなくて、それで落ち込んでいたのを見兼ねて早乙女さんがダブルデートを設定したんですって」
 もちろん私はその「彼」のことは知っています。
 なにしろ前の虹野さんがみのりちゃんに奪われた、と言っていましたから…
「その時まで私は、早乙女さんは結構がさつな方なんだろうな、という印象を持っていました。何しろいろんな女の子と話をしていましたから。でも実際に話してみると、結構いろんな方をしっかりと見ていて、状況に応じてこまめに対応できる方なんだな、とそう思うようになってきたんです」
「そうなんだ…」
 私はこの時、好雄くんの意外な一面を見た思いがしました。
 私にとっても好雄くんは私の好きな彼の親友なのですが、結構軟派な人なのかな、と思っていましたから。
「それから私、早乙女さんのことをいつも目で追うようになってしまったんです。これには私自身驚いてしまいました。私は自分が内向的な人だと知っていましたから、まさかそんな自分が他の人と付き合いたい、なんて思うとは想像できなかったんです」
「それで今日?」
「はい、何とか今の臆病な自分を直して、新しい自分になりたいな、そう思っています」

 その時、トランシーバーから誰かが叫ぶ音が聞こえてきた。
 私は思わずトランシーバーを手にとってボタンを押しながら、
「はい、まこ… 管理人Aさん、どうかしましたか?」
 とトランシーバーの向こうの相手に声をかけた。
 …いけない、私誰が管理人Bなのかが分かってしまったので、思わず名前を呼びそうになってしまいました。ここではあくまでも「管理人A」「管理人B」と呼び合わなければならないルールでした。去年自分で言っているくせに…
「詩お… しまった…、管理人Bさん、こちらの準備が完了しました。お願いします」
 彼もそのルールに戸惑っているようです。まあ彼は去年そんなことをしている人がいるなんて知らなかったでしょうから、しょうがないのかも知れませんね…。
 時計を見ると、もう12時20分になっています。
「それじゃ如月さん、頑張ってね。吉報楽しみにしています。」
 私がそう言うと、如月さんは緊張した面持ちで私に頷いてから、伝説の樹に向かった。
(如月さん、大切な時に貧血しないようにね!)
 私は心の中で、如月さんにそう叫んでいました。

 如月さんが伝説の樹の陰に隠れたのを見計らって、私は彼に連絡を入れました。
 それが伝わったのか、しばらく経って、好雄くんが校舎から飛び出してきました。
 あれ? 今まで私と一緒にいた好雄くんじゃない! なんかカッコいいな…
 いつもは軟派な好雄くんだったけど、でも今の緊張した面持ち、カッコいいな。
 その彼に向かって、如月さんが一生懸命自分の想いを伝えています。
 彼、真剣な表情で、如月さんの想いを聞いています。いままでの軽い雰囲気は微塵もありません。
 突然如月さんが嬉しそうな顔をしました。 どうやら想いは伝わったようです。
 良かった… そしてこれからもお幸せに…
 私は心の底からそう思いました。
 次の瞬間如月さんが倒れそうになりました。
 また貧血が起こったんでしょう。
(危ない!)
 そう思って出ようとしましたが、次の瞬間私はその場に留まることを決断しました。
 そう言えば野暮でした。今の如月さんには、傍に一緒にいてくれる人がいたんですよね。
 如月さんを優しく抱きかかえる好雄くんに、思わずキュンとなってしまいました。

「藤崎さん…」
 次の瞬間、不意に後ろから声をかけられました。


(編集後記)
 とりあえず第2幕を完了させました。

 …って、一体何週間かければ気が済むでしょうね(笑)
 仕事の都合上、及び他のSSの執筆のため、だいぶ遅くなりました。
 なお前から予告しております通り、次の第3幕より、以下の手順で掲載したいと思います。

1 まず物語のその幕で告白されるサイト管理者様にメールで送り、その管理者様のサイトに1週間掲載いたします。
2 その後私がその管理者様のコメントを掲載したバージョンを その他のサイト管理者様に送り、私のサイトでも掲載いたします。
(ただし最初から掲載をする約束でした虹野ももんが様の「沙希ちゃんのお弁当」とR-chan館長様の「乙女想夢」以外のサイト管理者様には、優先掲載幕の次の幕からこの措置を取らさせていただきますので、その点御承知おき下さいませm(_ _)m)
その際、運が良くて次の話がアップしていましたら、その対象のサイト管理者様にのみ、次の幕もつけて送りたいと思います。

 以上の形で掲載していきたいと思います。

 なお、優先掲載サイトは以下の通りです。

第3幕 ヒラタツ様「@-Hirataz Hi-Land」
第4幕 R-chan館長様「乙女想夢」
第5幕 流離いの剣士様「流離いの剣士の爆走生活」
第6幕 箕や様「風雅な詩人はときメモがお好き」

 第7幕の対象者であるまありんこん♪様がサイトを開設なさった場合でも同様の措置を取りますが、もしその時点でサイトがない場合は、今回と同様に送った後私のサイトで掲示することになるかと思います。
 以上いろいろとお手数をおかけしますが、宜しくお願いいたします。

 最後になりますが、早乙女好雄くんよりコメントをいただきたいと思います。宜しくお願いいたしますm(_ _)m

 ……………
 お〜〜〜〜〜〜〜〜い!!

 いないようですので、ワンマン運転士が代わりに(笑)

 好雄くんは結局卒業式の数日前に「俺、○○さんと付き合うことになったんだ」と報告を入れるのですが、それじゃちょっと可哀想過ぎないかい? と思いましたので、今回彼にも一世一代の大舞台を演じてもらうことにしましょう、ということなんです。

 ということで、次の第3幕、ヒラタツ様の「@-Hirataz Hi-Land」にてお会いしましょう〜(^^)

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