第四章 〜虹色のX'mas eve(3)〜
家に帰ると留守電が入っていた。メッセージの送り主は、沙希と詩織だった。
(ピー)”録音されたメッセージは2件です”
『さっきはごめんね。突然だったし、藤崎さん泣いてたみたいだから、それで…』
『でね、あの後藤崎さんと話したの。あ、その続きは今日の夜にということで。
それじゃあ、家で待ってるから…』
(ピー)”次のメッセージを再生します”
『あ、私。藤崎です。ごめんなさい、今日はこんなことになってしまって。』
『多分、虹野さんは分かってくれたと思う。ただ、私の言ったことも真実だということも分かってくれたらありがたいな。だって、あなたとはこれからも仲のよい幼馴染でいたいから…』
(ピー)”再生が終わりました。もう一度聞くときは…”
その夜、俺は約束通り沙希の家に行った。すると、彼女は何事もなかったかのように俺を迎えてくれ、二人きりのささやかなパーティーが始まった。
”後で話すから…”そう彼女は言ってたが、さすがに俺の方からは切り出すこともできないまま、ただ時だけが流れていった、その時…
「あのね…」
彼女がついに重い口を開いた。
「今日のことは藤崎さんから聞いたから、もう気にしてないよ。それに藤崎さんの気持ちも分からないことはないし、もし私が逆の立場だったら同じようなことしてたかもしれない。でもね…」
「………」
「でも、やっぱり今日だけは断って欲しかったな…って、私、何言ってんのかな。彼女とは幼馴染なんだし、一度くらいそういう機会があっても全然おかしくないよね。」
「………ごめん。」
「あ、別にあなたが謝らなくてもてもいいから。それでね、今日はどうしてもあなたに言いたかったことがあるの。」
「言いたいこと? 今じゃないと、ここじゃないとダメな話なの?」
「絶対に、って訳じゃないけど、やはりこうして誰もいない二人きりの場所で言いたかったから…」
そう言うと、彼女はカーテンを開けて窓の外を見た。窓の外ではジングルベルが鳴り響き、今年初めての雪が降り始めている。そして、それを見た彼女は、こう切り出した。
「今年、初めての雪だね。」
「うん。」
「来年も…」
「え?」
「来年も、また来年も、ずっとずっと、一緒にいたいな…」
俺はその言葉を聞いて、それまでもやもやとしていたものが一気に吹き飛んだ。
もう迷うことはない。彼女こそ一生を共にできる唯一の女性(ひと)だ。
「俺だって同じだよ。だから…」
「だから?」
「………結婚…しよう………」
こうして、今まさに二人だけの「ゴール」が見えた、一生忘れることのない一日となった。